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特集

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地球の記憶が息づく離島

隠岐ユネスコ世界ジオパークへようこそ
 ユネスコ世界ジオパークとは、世界的にみても独自性があり、価値があると認められた地質遺産があるエリアのなかで、それらの価値を保全し、次世代にむけた教育活動を行い、そして持続可能な経済活動につながる取り組みをしている地域のことをさします。隠岐は、2013年に世界ジオパークに認定され、ジオパークのプログラムがユネスコ傘下になったことで、2015年にユネスコ世界ジオパークとなりました。島根県沿岸からおよそ60km北に離れた、日本海の上に、隠岐諸島はあります。大小あわせて、180もの島からできており、人が住む島は4島あります。これらの島とその周りを囲む海域がジオパークとして認定されています。
 
 一番大きな島である島後(どうご)に対して、他の3島をまとめて島前(どうぜん)と呼びます。島後と島前は少し距離がありますが島前3島は島後と比べて、島の距離が近いのも特徴です。それぞれの島に特徴や個性があり、旅行を計画する際には島の位置や特徴も考慮して計画するのをおすすめします。

目次

  1. 4島の概要
  2. 大地が鼓動する場所
  3. 自然が描く芸術
  4. 楽しむ、そして守る

4島の概要

島後(隠岐の島町、人口:約 13,000人):
隠岐諸島で最も大きな島が島後です。そびえ立つ断崖に、乳房杉を代表とする、壮大な杉の森が広がるこの島には、古くから受け継がれてきた神聖な伝統が今も息づいています。島後では、質の高い黒曜石新しいタブで開きますが採れ、それらが日本全国各地に流通 したことから、古代より多様な人々や文化がこの地に集まってきていました。

西ノ島(西ノ島町、人口:約2,500人):
日本海の豊な海の幸によって栄えた漁業を基盤とするこの島には、何世紀にもわたって海上の安全を守ってきた神様が祀られる焼火神社があります。また、日本屈指の美しい海岸の景観が広がっており、中でも国賀海岸がおすすめです。丘を上った先から海に向かって望める絶壁の景観には圧巻されるでしょう。

中ノ島(海士町:人口:約2,200人):
隠岐は遠流の島としても有名ですが、鎌倉時代に権力争いに敗れた後鳥羽天皇もそのうちの1人でした。中ノ島は、後鳥羽天皇をはじめとした、外の人々を温かくもてなす風土と、新しいものを取り入れる文化が特徴的です。そしてその風土は今も受け継がれており、新しい可能性に対して開かれた島です。

知夫里島(知夫村:人口: 約600人):
知夫里島は4島の中で最も小さく、最南端に位置し、日本本土に最も近い島です。4島の中で離島らしさを一番感じることができるでしょう。この穏やかな島には豊かな自然が広がっており、赤ハゲ山の丘の牧草地では牛が放牧され、丘の上からは一面に広がる海の景色が楽しめます。

大地が鼓動する場所

 かつて地球には超大陸パンゲアの1つしかありませんでした。この大陸が、徐々に分裂して今のような形になっています。2億5千万年前にこのパンゲア大陸からユーラシア大陸などが分離し、隠岐を含む日本列島は約2600万年前にユーラシア大陸から分離して形成されました。
 隠岐が今の形になるには、そこからまた先の話になります。約600万年前、地殻変動によるゆっくりとした隆起と長期間にわたる火山活動の後、日本列島と大陸の間の海底から隠岐諸島の原型が現れました。その後、海面の低下と上昇によって半島になったり、離島になったりを経て、今の隠岐諸島になりました。
 隠岐諸島とその地質遺産は、日本列島の形成過程を記録するものです。長い年月にわたる岩肌の海岸浸食により、美しい海岸風景や崖、奇岩が形作られました。

 隠岐の島町のフェリーターミナルの横にある隠岐自然館では、島の地質史や生態系についての詳しい展示をご覧いただけます。また、海士町にあるホテルEntôの1階にあるジオラウンジには、島前3島の地質や文化に関する情報が展示された展示室があり、リラクゼーションエリアからは美しい海の景色を楽しむことができます。

自然が描く芸術

 では、隠岐諸島の素晴らしい大自然を紹介しましょう。何千年もの歳月をかけて彫り出された息をのむような景色や地質学的にも価値のある地形が特徴です。カメラやスマートフォンを忘れずにお持ちください。きっとすべての瞬間を写真に収めたくなるはずです。

島後(隠岐の島町)
 隠岐諸島で最も象徴的な場所のひとつがローソク島(じま)です。これは高さ20メートルの海上に立つ大きなキャンドルのように見える海食柱です。海食柱とは、侵食によって本土の海岸線から切り離された岩でできた島で、何千年もの間、波や風によって削られて形成されます。ローソク島自体も印象的ですが、真の魅力は夕暮れ直前に訪れます。沈む夕日が岩に重なり、まるで「キャンドルに火を灯す」ように見える瞬間です。この幻想的な風景は、ローソク島遊覧船からのみ見ることができ、熟練した船長が船を絶妙に操り、写真に収める絶好のタイミングを提供してくれます。

 浄土ヶ浦海岸に見られる岩の層は、約2600万年前の火山噴火によって形成されました。天国のような場所という名の通り、この絵のように美しい海岸を訪れれば、なぜこの名がついたのかがわかるでしょう。那久岬(なぐさき)からは、海と遠くに見える島前の島々の絶景を楽しむことができ、特に夕暮れ時に人気があります。白島展望台は島後の最北端に位置し、青い海、白い崖、緑の松の木が織りなすコントラストで知られています。歩道が海岸まで続いており、ガイド付きツアー新しいタブで開きますに参加して探索することをおすすめします。

西ノ島(西ノ島町)
 国賀海岸(くにがかいがん)は13キロにわたって続く壮大な岩の造形で知られています。その中でも、高さ257メートルの摩天崖(まてんがい)は、西ノ島や隣の知夫里島(ちぶりじま)の素晴らしい景色を望むことができる名所です。崖に見られる層の色の違いは、繰り返された火山噴火によってこの土地が形成されたことを示しています。もう一つの見どころは通天橋(つうてんきょう)で、波が岩に繰り返し打ちつけた結果形成されたアーチです。このアーチはかつて海食洞窟の入口でしたが、崩落や侵食によって現在の開口部だけが残っています。摩天崖から通天橋まではハイキングコースがあり、国賀海岸周辺のハイキングトレイルでは、バードウォッチングや、春から秋にかけて咲く様々な花を観賞することができます。また、道中では放牧された牛や馬に出会うこともあるでしょう。

 西ノ島町の名物、国賀めぐり観光船では、陸からとはまた違った景色が楽しめます。海の状態が良ければ、経験豊富な船長が島唯一の運河を通って海中洞窟(その中には250メートルの長さがある洞窟も含まれます)まで案内してくれます。赤尾展望台からは、国賀海岸の風景がさらに美しく見渡せ、摩天崖の頂上や通天橋のアーチも含む沿岸全体を一望することができます。

中ノ島(海士町)
 島で最も人気のある観光スポットの1つが、絵画のように美しい明屋海岸(あきやかいがん)です。明屋海岸から見える赤い岩は「スコリア」と呼ばれ、火山から噴き出した溶岩が積もり、固まって形成されたものです。

この場所には素敵な伝説が残されています。宇受賀命(うづかみこと)と比奈麻治比賣命(ひなまじひめみこと)という神々が恋に落ち、娘の柳井姫(やないひめ)が生まれたのがこの海岸とされています。このロマンチックな場所にふさわしく、海岸沿いの道の終わりから見える岩には、ハート型に穴が空いた岩があります。このため、明屋海岸は幸せな結婚や健康な子どもを授かることを願う人のためのパワースポットとしても人気です。
三郎岩という岩も海士町でおすすめのスポットです。この3つの岩は、太郎岩(一番大きな岩)、次郎岩(中くらいの岩)、三郎岩(一番小さな岩)という3人の兄弟に例えられています。三郎岩の景観を堪能するには、「あまんぼう」という水上と水中両方からの景色を楽しめる遊覧船がおすすめです。「あまんぼう」では中ノ島周辺の海から見る島の景色を楽しんだ後、船の中から水中の魚たちの様子を楽しむことができます。

知夫里島(知夫村)
赤銅色が鮮やかな赤壁(せきへき)は、かつてここにあった小さな火山の断面が露わとなったものです。鉄分を含む火山の溶岩が空気に触れて酸化することでこのような美しい赤銅色になりました。駐車場から徒歩で簡単にアクセスでき、赤壁遊覧船に乗ればさらに近くで岩を観察することができます。陸から見下ろす景色とはまた違ったダイナミックな赤壁を見上げることとなります。

知夫里島で最も高い山である赤ハゲ山は、標高325メートルで、ここからは島前カルデラ新しいタブで開きますを一望するのに最適なスポットです。島前3島はかつて1つの島で火山噴火の後の陥没によって凹んだ土地に海の水が入り込み、3島の島になったとされています。海にあるカルデラは世界でも珍しいもので、似た地形としてギリシャのサントリーニ島があげられます。さらに、天気が良ければ360度のパノラマビューを味わえ、島後まで含めた隠岐4島や、本州の大山の方まで見渡せます。赤ハゲ山周辺の牧草地では、牛がその高さを気にすることなく草を食み、タヌキが牛の餌を狙って集まります。(かつてペットとして飼われていものが逃げ出して大繁殖してしまいました。)また、赤ハゲ山は、牧畑農法の石垣跡を見られる理想的な場所でもあります。牧畑農法とは、畑を4つの区画に分け、石垣で囲いながら作物と家畜を交互に育てるという革新的な方法で、島々で何世紀にもわたって営まれ、知夫里島では1960年代後半まで実施されていました。

楽しむ、そして守る

 隠岐諸島の自然や景観に浸る方法はたくさんあります。複数のハイキングコースが海岸を縁取り、森林に覆われた山の斜面を通っています。これらのコースには、ご自身や仲間うちで楽しめるものもあれば、地元のガイド新しいタブで開きますと一緒に巡るのをおすすめしているコースもあります。サイクリング、シーカヤック、釣り体験など様々な体験がそろっており、アクティブなアウトドア体験を求める方、自然と一体になる穏やかな時間を求める方、どちらのタイプも、素敵な時間を過ごすことができることと思います。

 このような美しい景観を守るためにも、隠岐でのご旅行中は、特に以下の指定特別保護区域で隠岐諸島の地質および自然遺産を守るためのご協力をお願いいたします。
:国賀海岸(西ノ島)、赤壁(知夫里島)周辺、大満寺山、白島海岸および浄土ヶ浦海岸(沖ノ島町、島後)。
また、ゴミは持ち帰り、ペットはリードにつなぎましょう。野生動物や植物、岩石を乱したり、持ち出そうとしたりせず、指定されたハイキングコースから外れないようにしてください。隠岐諸島での行動規範や安全に関する詳細情報については、こちらをクリックしてください。

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