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地球の神秘を感じる隠岐の岩石を訪ねて【島後・東海岸編】

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地球の神秘を感じる隠岐の岩石を訪ねて【島後・東海岸編】

隠岐の観光名所の大地の成り立ちに着目した時、無機質に感じる岩や石が、地球の規模の歴史ロマンを語りかけてくる......。そんな隠岐の島の造形に魅せられた地元ライターが、その感動とともに見所を紹介します。

取材・天満 さな(てんま さな)
2020年11月、広島から隠岐の島に移住してきました。静かな海辺に古民家を買い、娘と猫との生活を始めるシングルマザー。いつかは、改装して古民家カフェを開きたいという夢があります。家がボロボロ過ぎて、どこから手をつけていいか分からない状態ではありますが。(2021年11月現在)coffee・自然・歴史好き。隠岐の島に来て、心が震えるような感動、浄化されるような感覚を味わうことができたことから、癒しを求めている人たちに隠岐の神秘を伝えたいと願っています

歴史や自然が好きな私は、地質学的な分野・無機質に感じる石や岩が、さほど好きではありませんでした。そんな私を変えたのが隠岐の島の岩石。ここからは隠岐の島をめぐりながら楽しめる魅力的な岩石を紹介します。

1 大久犬島のグリーンタフ

隠岐の島町の西郷港から県道47号線(西郷布施線)に出て、車で布施方面に向かってドライブしていると、大久(おおく)漁港に打ち上げられた難破船のようなもの(写真①)があるのが目に入ります。

不思議に思って近づいて行くと…….。

写真① あなたは何に見えますか?


写真② 大久漁港付近にある大久犬島のグリーンタフ


それは船ではなく、緑色をした岩。(写真②)
隠岐ジオパークHPの説明によると、

”日本列島の形成を一番わかりやすく示している岩石がグリーンタフと呼ばれるこの岩石です。

本州の日本海側に沿って2000~1500万年前の緑色をした川や湖でできた地層が広く分布しています。これは、当時の日本海側に土砂がたまるような環境が広範囲にわたって存在していたことを教えてくれます。

さらに、緑色は火山灰に含まれる成分から由来したものであり、当時の火山活動が活発であったこともわかりますし、当時の川や湖に棲んでいた生物の化石も見つかることから、当時の日本周辺がどんな環境だったのかということまで知ることが出来ます”

そんなグリーンタフは、日本が大陸であった時代の様子を知る上で、重要な手がかりとなるほど貴重な岩であるにも関わらず、柔らかい岩で加工しやすいため、隠岐の島では昔から生活の中でよく使われました。

今でも石垣や砂利の中などいたる所で見ることができます。実は、私の住んでいる古民家の石段にもグリーンタフが使われていたため、グリーンタフを研究する学生が我が家を訪れてくれたこともあります。

隠岐の島が大陸であった時代、なんと約2000万年前の岩石について、さらに詳しく知りたい方は「グリーンタフ新しいタブで開きます

隠岐ユネスコ世界ジオパーク」をご覧ください。

2 黒島(大久地区)展望台 

隠岐の島にはいくつかの黒島があるのですが、そのうちの一つが大久漁港からさらに北へ行った所にあります。晴れた日の東海岸は実に気持ちがいい!!

黒島展望台の左手に海岸へ降りる遊歩道があり、少し険しくみえる坂道を降りてみると、景色は一変!

黒島展望台からの眺望では、沖合に小さく見ることしかできない黒島を近くに感じることができるし、隠岐の海の透明感を目の当たりにできます!

ここから見る黒島が下の写真です。(写真③)

写真③黒島(この写真だけ、秋晴れの日に撮影。他の写真は極寒の1月)

黒島は、約330万年前に噴火した火山の火口跡なんだとか。よく見ると垂直に「柱状節理(ちゅうじょうせつり)」と呼ばれるヒビが入っています。噴火と共に吹き出た溶岩が急速に冷えて縮むために、このような状態になるそうです。

また、この黒島が特にめずらしいのは、おそらくものすごいスピードで、噴火したために地中深くの岩石を引っ張り出されてきた岩石はマントルゼノリスと呼ばれ、主にカンラン岩(マントル上部にある構成鉱物)で構成されています。

カンラン岩を研究・調査したところ、隠岐の島のマントルはどのくらいの深さにあるのかが判明したとのこと。
地下を深く掘らず、岩石の調査だけで地球内部の状態が分かったのは、世界初。これにより、隠岐の岩石が世界から注目を集めているのです。

より詳しい情報は「そして、マントルゼノリスの島へ新しいタブで開きます

しまねまちなび」をご覧ください。

3 浄土ヶ浦(じょうどがうら)海岸

次の目的地は、
とんちで名高い一休和尚が命名したといわれる浄土ヶ浦です。

先程の黒島展望台から北へ車で10~15分走ると、布施という集落に着きます。そこから「浄土ヶ浦」へ向かう案内看板にそって車で進むと、夏季限定お食事処の建物の奥に下のような見事な景観が望める浄土ヶ浦海岸に辿り着きます。(写真④)

写真④浄土ヶ浦海岸(始めに出会う眺望)


北風がビュービュー吹きすさぶ1月の荒れた海でもこの美しさ。夏の晴天の日の海の透明感たるや!

隠岐の中でも最も複雑な地形と言われる浄土ヶ浦海岸は、その大部分が約2600万年前の溶岩や火砕岩(かさいがん)からなり、隠岐諸島と日本列島が大陸から分離してゆく時の活発な火山活動をも記録しています。この海岸だけで、5つの時代に作られた7種類以上の岩石が組み合わさってできているのです。

4つの並んだ入江の周辺に大小さまざまな大きさの島があり、それらが松の緑、海の青と、そして不思議な伝説に彩られています。

島ごとに違う岩石が、島の形や岩肌の色、表面の凹凸、坂道の傾斜などに様々なパターンを生んでいるので、実に、複雑で面白い。

大昔、浄土ヶ浦は川の河口でした。かつての隠岐の島で、大噴火が起こった時の溶岩が浄土ヶ浦につながる川を流れ下り、その場で冷え固まった溶岩が硬かったために、風雨の浸食に耐え、写真④に見られる切り立った山が連なるような特別な地形になったといいます。かくして複雑で美しい景観が生まれたのです。

浄土ヶ浦海岸はいくつかの小さな海岸から成り立っています。写真④の海岸を右手に入る遊歩道に入り、トリゲ海岸を目指して歩いていくと左に降りる道があります。そこの道を下まで行き、見つけた岩が下の写真です。(写真⑤)

写真⑤ 湖の底でできたしま模様の地層


御覧の通りはっきりとしたしま模様が見えます。これは、浅い湖の底に流れ込んだ土砂の粒の粗さの違いによってできました。約2600万年前この場所は湖の底であったことの証拠。よく見ると一つの層の中にも、水の流れが作ったより細かいしま模様が入っています。太古の水の流れが、ここに刻まれていると思うと感無量です。

縞模様岩の海岸から遊歩道に戻り、トリゲ海岸に向かう急斜面を降りたところで見える景色がこちらです。(写真⑥)

写真⑥ トリゲ海岸からのながめ もうひとつのローソク島 手前は平らな岩場


手前の平らな岩場は、波に削られてできたものです。向こうに見える尖った岩は、島後の遊覧船で有名なローソク島ではありません。もう一つのマイナーなローソク島です。

私は手前に見える平らな岩と、鋭利なローソク島のコントラストが好きです。岩の性質や波などの環境によって、岩の表情が変わり作り出される絶景。自然の偉大さを感じずにはいられません。

冬の日本海、飲み込まれるのではないかと思われるほどの、波しぶき。お越しの際は気を付けて。

≫浄土ヶ浦海岸 – 隠岐の島旅行新しいタブで開きます
≫環境省-浄土ヶ浦新しいタブで開きます

今日は、隠岐の島の東海岸の観光名所をたどりながら、岩を通して見える大地の成り立ちを見ていきましたが、いかがだったでしょうか。少しでも興味をもっていただけたら幸いです。

参考資料/
「グリーンタフ新しいタブで開きます

隠岐ユネスコ世界ジオパーク」

しまねまちなび」”>「そして、マントルゼノリスの島へ

しまねまちなび」
浄土ヶ浦海岸 – 隠岐の島旅行新しいタブで開きます
環境省-浄土ヶ浦新しいタブで開きます
『隠岐大山国立公園』
『しまねまちなび』
『隠岐ユネスコ世界ジオパーク』
『島根ジオサイト100選』
『ふるさと隠岐』(隠岐の島町教育委員会)(2007年3月31日発行)